マーケティング活動を行うには、市場動向や顧客のニーズ、競合の状況など様々な情報収集が欠かせません。
このような情報収集、調査は「市場調査(マーケットリサーチ)」「マーケティングリサーチ」と呼ばれています。
言葉が似ているため、混同されがちですが、厳密には異なるものです。
この記事では、市場調査の手順や手法、「市場調査(マーケットリサーチ)」と「マーケティングリサーチ」との違いについて年間多くの調査を手掛ける調査会社として解説し、マーケティングへの活用方法をご紹介します。
・市場調査を検討中だが、どのように進めればよいのか、何から着手したらいいのかわからない方
・マーケティングリサーチとの違いについて知りたい方
目次
- 1 市場調査とマーケティングリサーチの違いとは
- 2 市場調査を実施するメリット
- 3 市場調査を行う目的
- 4 マーケティングリサーチを行う目的
- 5 市場調査の代表的な手法
- 6 市場調査の手順
- 7 市場調査やマーケティングリサーチを成功させるために最も重要なこと
- 8 電通マクロミルインサイトは、課題や調査目的の整理からお手伝い致します
市場調査とマーケティングリサーチの違いとは
市場調査と似た調査手法に、マーケティングリサーチという手法があります。
調べる対象や目的によって市場調査、マーケティングリサーチは明確に違いがあります。
市場調査とは:市場を調査すること
市場調査とは、文字どおり「市場(マーケット)」の調査を意味し、マーケットリサーチと呼ぶこともあります。
市場調査では次のようなことを調べます。
市場規模 / 参入企業 / 市場シェア / 顧客層 / 市場環境
各商品・サービスごとに、顧客層や競合他社、市場規模、トレンドなどは異なります。
市場環境に関する情報は、自社にとっての市場の魅力度やリスクなどの把握に役立てることができます。
マーケティングリサーチとは:マーケティングのためのリサーチ
マーケティングリサーチは、マーケティング活動に必要な調査全般を指します。
すでに実施済のマーケティング施策の効果を検証したり、実施予定のマーケティング施策の効果を予測するなど、マーケティング戦略に活用するためのリサーチがマーケティングリサーチです。
市場調査とマーケティングリサーチの関係性
マーケティングリサーチと市場調査の違いを理解するためには、マーケティングの理解が不可欠です。
マーケティングは、「商品やサービスをより広く・多く届ける仕組みづくり」と言い換えることができます。
その仕組みづくりのためには、
- 自社の商品が属している市場全体を把握=市場調査
- 競合他社を見据えた商品作りと価格設定=製品調査、価格調査
- 効果的な広告や販売方法の検討=広告調査
などの調査が必要になります。
「マーケティングリサーチ」には、市場を対象とするもののほか、商品、広告、ブランド等のさまざまなことを対象とする調査が含まれます。
このような観点から「市場調査」は「マーケティングリサーチ」の中の1つであると位置付けられます。
市場調査を実施するメリット
市場調査とマーケティングリサーチの関係性を説明しましたが、市場調査で明らかになることと、マーケティングでの活用方法を解説します。
客観的な数字を得ることで判断しやすい
市場調査の手法として一般的なのが、アンケート調査ではないでしょうか。
アンケート調査は質問項目に対し尺度(順位や度合い)を用いて回答します。これによって回答者全体の傾向を客観的な数値として把握することができます。
アンケート調査に代表される、統計的な数値として収集する調査を定量調査といいます。
それに対してグループインタビューやケーススタディ、観察調査などを通じて、意識や態度、価値観、評価の理由といった質的な情報を収集するものを定性調査といいます。
マーケティングリサーチでは、収集したい情報に応じて、定性調査と定量調査を使い分けながら、課題解決につながるデータを収集します。
一般的に、定性調査は調査初期の、問題を発見したり気付きを得たりする探索的段階で実施されます。定量調査は、実態の把握や仮説検証のための客観的な事実を知ることを目的として行われることが多い調査方法です。
客観的な数値として集計される定量調査データは、マーケティング施策のための強い説得材料となる一方で、サンプルのとり方や調査票の設計、調査方法などにより結果が大きく左右されるため、専門的な知識が必要です。
マーケティング施策実行前に未知のリスクや注意点を知ることができる
新たな市場に進出する際のフィジビリティスタディ(実行可能性調査)といった目的でも市場調査を行います。新規事業や新たなマーケティング施策という、具体的な企業活動の成功確率を上げるための調査です。
例えば新規事業で、市場規模や獲得できそうなターゲットの数値、ROIなどをシミュレーションすることで、事業化を判断する場合などです。
経営者や事業責任者の勘や経験に頼るのではなく、客観的な判断材料をもとに意思決定を行い、事業を軌道に乗せていく手助けをするのが市場調査です。
今起こっている変化を把握することで戦略に反映できる
次々と新しい商品やサービスが出現し、時代とともに変わっていく消費者の嗜好や行動パターンに対応していくことが、企業には求められます。顧客からの声を取り込み、市場の変化を察知するためのチャネルの一つとしても市場調査は機能します。
時系列の変化に着目した調査手法の一つにパネル調査があります。
同じ調査対象に定期的に同じ質問を行い、時間の経過に伴う変化を分析する調査手法です。
パネル調査は大学や研究機関の社会調査の枠組みのなかで実施され、ライフスタイルの変化や消費行動、働き方などについての質問項目が設定されるケースが多いです。
継続的な調査や時代の変化に着目した調査項目を設定することで、今起こっている変化を捉え、それをマーケティング戦略に活かしていくことも市場調査の役割のひとつといえます。
市場調査を行う目的
市場調査を行う主な目的は、大きくは下記の4つです。
目的1:市場規模や市場トレンドの把握
市場調査の主な目的として、市場規模やトレンドを把握することがあげられます。
ひとくちに市場といっても、さまざまな業界があり、販売規模や製造・流通・小売に関わる企業の数などによって対象とする顧客層が異なります。
成長する市場がある一方で、縮小している市場が存在します。
これらの要素を勘案して対象市場が自社にとって魅力的か、リスクの有無などを把握しマーケティングや経営戦略に活かすことも市場調査の目的のひとつです。
目的2:消費者のニーズ把握
買い手である消費者のニーズを把握することは、マーケティング戦略の出発点と言えます。
既に高品質の商品やサービスは世の中で飽和状態のため、企業視点で良い商品・サービスを開発しても、消費者に受け入れられるとは限りません。
そのため、消費者自身も意識していない隠れたニーズに対応することが、ますます重要になっています。
例えば、顧客視点で、新たな切り口のニーズを捉えて成功した例として、スターバックスが代表的です。
従来のコーヒーチェーンでは、「味」や「品質」が消費者ニーズの中心であると考えられていましたが、スターバックスでは、オープンテラスや寛げるインテリア、親しみやすい接客など、「居心地」をテーマに打ち出して成功しました。
このように、消費者が求めているものを解き明かすために、買い手側のニーズやウォンツ、行動パターン、価値観といった情報を集めることが必要です。
自社の商品・サービスへの認知度、イメージ、満足度といったことはもちろん、消費者のライフスタイルや価値観の変化を把握することが市場調査の目的の一つです。
目的3:競合他社のシェア・動向を把握
市場の中で生き残るために、競合他社との差別化は重要です。そのためには市場における自社だけでなく、競合他社の強み・弱み、そして他社のシェアや戦略などを把握する必要があります。
市場のなかで、自社の取るべきポジションを把握し、自社のマーケティング戦略に対する競合他社の反応を予測することも市場調査の役割です。
目的4:新規事業や海外進出など新市場への参入検討
自社にとって新たな市場に参入する場合に、市場に参入する価値や成功の可能性について判断を行うために市場調査を行います。
特に海外進出を図る場合には、顧客ニーズに加えて現地の文化や独自のビジネスルールを事前に把握することが必要です。
新規市場や海外市場の調査でよく使うフレームワークにPEST分析というものがあります。
政治、経済、社会、技術の4項目を対象とし、頭文字をとって「PEST」分析と呼ばれています 。
PEST分析の4つの視点
PEST分析 | 具体例 | 分析の視点 |
Politics 【政治的要因】 | 政権、法制度、 税制など | 政権やその傾向が変わった場合の施策の変化、税制など、 市場のルールが変更される可能性を検討する |
Economics 【経済的要因】 | 経済情勢、景気動向、経済成長率、 株価、金利など | 経済情勢による需要や価格の変動がサプライチェーンに 与える影響などを分析する |
Society 【社会的要因】 | 人口動態、需要構造、消費者意識、 流行、教育など | 人口動態の変動による需要構造やライフスタイルの変化、消費者意識の変化などが商品・サービスの需要に与える影響を分析する |
Technology 【技術的要因】 | 技術革新、 新技術、特許など | 技術革新が産業構造に与える影響や、知的財産の戦略的な活用などを検討する |
自社を取り巻く4つのマクロ環境を調査、分析することで、新規事業の立ち上げや、会議足上の進出時の戦略立案に役立てます。
マーケティングリサーチを行う目的
次は、マーケティングリサーチを行う目的について解説します。
マーケティング戦略策定でよく用いられるSTP分析とマーケティングミクスの4Pという2つのフレームワークにおいてマーケティングリサーチの活用方法を解説します。
STP分析とは、次のそれぞれの頭文字から名づけられた分析です。
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
活用目的① | 顧客のセグメンテーション(STP分析:Segmentation)
「S」はセグメンテーション(Segmentation)を指し、一定の基準で顧客層を分類することを意味します。 分類する際には、以下のような基準が用いられます。
デモグラフィックデータ | 年齢、性別、職業、年収 など |
地理的変数 | エリア、季節、気候、天候 など |
心理的変数 | 志向性、ライフスタイル、価値観 など |
行動変数 | 商品購入の頻度やタイミング・使用用途など |
一般的には、年齢・性別・職業といったデモグラフィックでセグメンテーションされた商品は多く存在しています。例えば「若い女性向けのアプリ」「子供やシニア向けのスマホ」「ビジネスマン向けのスーツ」などです。
ただし、消費者ニーズが多様化している現在では、単純な年齢・性別だけで切り分けても有効なセグメントにはなりません。
女性の中でも「健康や美容に関心の高い女性向け」など、消費者がどのような志向や価値観をもっているか、といった心理的変数を加味してセグメンテーション化していきます。
デモグラフィックデータや地理的変数などについては、デスクリサーチにより、官公庁などの統計データを用いて調査可能です。
より消費者像を明確にするためには、アンケート調査やグループインタビューにより、価値観やライフスタイルを明らかにする必要があります。
活用目的② | 顧客ターゲットの選定(STP分析:Targert)
STPの「T」にあたるのがターゲティング(Targeting)であり、セグメンテーションにもとづき、どのセグメントに向けてマーケティングを行うべきかを決定します。 ターゲティングを行う際には、6Rという下記の指標をもとに判断します。
6R
6R | 分析の視点 | ポイント |
---|---|---|
Realistic Scale (市場規模) | 対象とする市場の規模が適切かどうか
| 規模が大きい市場は魅力的だが競合や新規参入も多く、競争が激しい |
Rate of Growth (市場の成長性) | 今後の成長性が見込める市場か | ・市場規模が大きくても衰退市場であればリスクが生じる ・今後の成長が見込める場合は早期に参入すると先行者利益を獲得できる |
Rival (競合状況) | ブルーオーシャンかレッドオーシャンか | 寡占市場であれば参入のハードルは高い
|
Rank / Ripple Effect (優先順位 / 波及効果 ) | 他のセグメントに対する影響力や波及効果を狙えるセグメントかどうか | 今後メディアが注目しそうな市場はマーケティング効果が得やすい |
Reach (到達可能性) | 広告やプロモーションが潜在顧客に届く可能性はあるか | ユーザーへの導線が確保できていない場合は見直しが必要 |
Response (測定可能性) | 商品・サービスの満足度や広告効果が測定可能であるかどうか | 効果検証ができるかどうかで目標設定に影響が出る |
6Rの指標を把握するには、市場調査を行い市場規模や参入企業数、競合他社の市場シェアを明らかにします。
また、波及効果や到達可能性、測定可能性といった要素を調べる際にはインターネットリサーチが役立ちます。
マーケティングリサーチを行うことにより6Rの視点を総合的にみて、自社にとって魅力的な市場がどこか選定していきます。
活用目的③ | ポジションニングの決定(STP分析:Positioning)
STPの「P」はポジショニング(Positioning)です。
セグメンテーションにより市場を細分化し、ターゲティングでどの市場を狙うか決めた後、その市場の中で自社がどう差別化を図るのか決めることを意味します。
顧客が重視する比較要素をもとに二次元のマップに視覚化して、競合他社といかに差別化できるのか、を考えます。
例えば下記図のように、価格が高いか低いか、デザイン重視なのか機能重視なのか、といった2軸で自社や競合他社のポジショニングを可視化します。
このように競合他社との相対的な位置付けを明確にし、自社が取るべきマーケティング戦略の方向づけを行います。
評価軸を決めるために、B to Cではアンケート調査やインタビュー調査、B to Bではエキスパートインタビュー調査などが用いられます。
マーケティング戦略を決める4P(マーケティングミックス)
STPにより「誰に」どのような「立ち位置」で商品・サービスを提供するかという方向性を定めました。
次に、商品・サービスを「いくらで」「どのように」提供するかを決めるのが4P(商品・価格・流通・プロモーション)です。
4Pにおいてもマーケティングリサーチが活用されます。
活用目的④ | 製品調査(4P:Product)
4PのProductにあたるのが製品戦略です。
商品コンセプト、パッケージデザインなどへの反応や評価を知るために、消費者に試供品を使用してもらうなど、製品調査を実施します。
製品調査には、2つの方法があります。
1つは、特定の会場において、食品や日用品、商品デザインやパッケージなどの試作品に対する評価やイメージなどを調査する会場調査です。
もう一つは、対象とする商品を実際に日常のなかで使ってもらい、使用感や使い方、評価、感想などについてフィードバックを得るホームユーステストがあります。
一度商品を市場で販売した後の改変やリニューアルには多くの時間や費用を要しますので、発売前に入念なリサーチを実施することが重要です。
活用目的⑤ | 価格調査(4P:Price)
4PのPriceは価格を指します。 マーケティングにおいて、価格戦略も重要な要素です。
高くても買われる商品か、安くないと売れない商品か、という価格弾力性が商品カテゴリーごとに異なります。
加えて、競合他社に対する自社商品の価値を、ユーザーがどう評価するかが最も大きな問題となります。
活用目的⑥:販売チャネル調査(4P:Place)
4PのうちPlaceは流通チャネルと販売方法が該当します。
例えば、同じ家電製品でも、
家電量販店 / 家電専門店/ メーカー直販店舗 / メーカー直販サイト / テレビ通販 / ショッピングモール
など、消費者はさまざまな方法で購入できます。
実際の購入チャネルを調査するには、インターネットリサーチが用いられますが、購買データを活用する方法があります。
弊社では、家計簿アプリと連動した購買データの分析サービスも提供しており、どのチャネルで購入されているか、どのような商品とセットで購入されているか、を読み解くことも可能です。
活用目的⑦:プロモーションミックス(4P:Promotion)
4Pのプロモーション(Promotion)にあたるのが広告宣伝、セールスプロモーション、人的販売の3つです
広告宣伝
広告宣伝はマス媒体やインターネットを通じたプロモーションです。
ターゲットとする顧客層の目に留まるための、媒体の選択、出稿のタイミング、クリエイティブやメッセージの内容が消費者の反応に大きく関わってきます。
セールスプロモーション(SP)
セールスプロモーション(SP)は消費者の購買意欲を刺激し売上を増やすための取り組みと、流通業者の販売意欲を高めるための取り組みを指します。
消費者向けのイベントやキャンペーン、店頭POP、ダイレクトメールなど、流通業者向けのインセンティブやコンテストなどがあります。
人的販売
人的販売とは営業担当者や販売担当者がユーザーに直接販売を行うことを指します。営業ツールやセールストークなど営業・販売担当者が売りやすい仕組みを作ることもマーケティング活動のひとつといえます。
広告の到達率やプロモーションの効果を検証するにはインターネットリサーチが用いられます。 広告から受けるイメージやプロモーション前後での行動変化などを深く知るためにインタビューをする場合もあります。
また、プロモーションを複数の媒体で組み合わせて行った場合、弊社ではアプリ広告・ Web広告・ TVCM視聴実態等の計測を行うソリューションをご用意しており、クロスメディアでの効果測定が可能です。
市場調査の代表的な手法
市場調査の代表的な手法を4つ紹介します。
手法1:デスクリサーチ
デスクリサーチとは、文献や統計データ、記事データベースなど、既に公表されている情報を収集することです。 デスクリサーチは、対象市場の概要を把握し、課題整理のための行われます。
デスクリサーチで対象とする情報は、下記になります。
有料データ | ・新聞、雑誌などの記事データベース 調査会社が実施したレポート |
---|---|
無料データ | ・一般紙・専門誌などのニュース記事 ・官公庁統計 ・業界団体の公表資料 ・出版物 ・社内データ ・ネット情報など |
誰でもインターネット検索で素早くかつ無料で情報を得ることができますが、膨大なデータの中で信頼性のある情報の取捨選択や、有料のデータベースへのアクセスなど、自力で行う場合とプロが行う場合では、品質や網羅性に大きな差が出ることもあります。
手法2:エキスパートインタビュー
エキスパートインタビューとは、特定の業界やマーケット、商品分野、海外情報などに知見を持つ専門家や有識者、経験豊富なビジネスパーソンなどに直接インタビューをすることです。
調査テーマに関連する多くの情報や知識を持っている人から話を聞くため、実践的かつ具体的な情報を得られる可能性の高い手法です。
インタビューの対象者の選定には、エキスパートの紹介サービスを利用する方法があります。
人脈ベースのネットワークではたどり着けない、その道のプロからの情報やアドバイスを得ることが可能です。
特に海外市場を調べる場合は、駐在員や現地の人に聞くことも有効ですが、調査会社を利用して情報感度の高い適任者にヒアリングしたほうがスムーズな場合もあります。
手法3:インターネットリサーチ
インターネットリサーチは、調査会社に登録している一般消費者(モニター)向けに、インターネットを通じてアンケート調査を実施する手法です。
モニターには様々な年齢・属性の消費者が登録されているため、特定のターゲット層を抽出して多くの人の意見を集めることが可能です。
例えば、「20代でXXの商品を週〇回購入する人」といった条件の消費者にのみ、アンケートを実施します。
インターネットリサーチは数値化出来るデータを収集することで消費者の属性とその傾向を客観的に把握できます。
手法4:インタビュー調査
インタビュー調査では、消費者に対面のインタビューを行い、定量調査では把握することが難しい、消費者の価値観、心理的要素などを探ることが可能です。
例えば、なぜその商品を選んだのか、もしくは選ばなかったのか、以前は購入していたのに他のブランドに切り替えたのはなぜか、など細かな心理の変化をインタビューにより対象者を直接聞くことができます。
少人数のグループでテーマについての話し合いを行うグループインタビューと、1対1で対象者と信頼関係を築きながら、テーマをより深く掘り下げるデプスインタビューという手法があります。
市場調査の手順
市場調査を実施する際に、具体的にどのような手順で行うのか解説していきます。
マーケティング課題はあいまいな形で提起されることがほとんどです。
市場調査を行うことで何を明らかにするのか、マーケティング課題を解決するために何を調べなければならないのかを明確にしたうえで調査を計画することが求められます。
具体的な市場調査の実施手順は当初の課題設定によってまったく異なったものになる場合もあるので、調査開始段階のプロセスを重要視することが必要です。
目的を明確にする
市場調査に限らず、調査を行う際に一番大切なことは、目的を明確にすることです。
例えば、特定の商品の売上が芳しくないといった場合に、マーケティング上の課題がどこに存在するのかは、この時点ではわかりません。
それを明らかにするのが市場調査の目的でもあるわけですが、広告やプロモーション戦略についての調査を行い、見直しを図っても、根本原因が流通政策に存在しているのであれば課題解決につながらないことは明らかです。
課題解決に向けた最終的な調査の目的と調査業務の範囲を明確にすることが、市場調査を計画する上での最初のステップです。
事前にデスクリサーチを行う
デスクリサーチとは、ネットの情報や図書館などを利用して、調査テーマに関する既に公開され入手可能な情報を収集することです。
実際に市場調査を行って得られた結果を1次データと呼ぶのに対し、既に収集され、加工・編集された情報を2次データといいます。2次データには、官公庁統計、業界団体が公表する資料、新聞や雑誌などの記事、業界専門誌の記事、出版物、ネット情報、社内データなどが該当します。
これらの情報を参考にして、直面しているマーケティング課題解決につながる仮説を立て、それを検証するための具体的な調査方法の輪郭を描いていきます。
市場の全体像を把握するためのマーケットリサーチであれば、デスクリサーチで完結する場合もあります。
また、特定の業界や商品アイテムなどに関する調査データを、市場調査会社が有料で販売しているものもあるので、そういったものを活用することもデスクリサーチの段階では役に立ちます。
予算やスケジュールを決める
次に調査計画を設定していきますが、予算やスケジュールによって調査計画も決まってきます。
調査計画で設定する項目は以下のようなものがあげられます。
- マーケティング課題
- 調査目的
- 調査対象
- サンプリング方法
- 調査項目
- 実査方法
- 分析方法
- 調査日程
- 調査費用
デスクリサーチの段階で十分なデータを収集し、それにもとづく十分な議論が行われることが望まれますが、実務の現場では調査期間や予算が優先されることが多いことも事実です。
リサーチ担当者にはリサーチ技術とともに経験と洞察力が求められます。
市場調査を実施する
マーケティングリサーチの実施段階では、アンケート調査やグループインタビュー、製品テストなどを行い、実際にユーザー層や潜在顧客層とのコミュニケーションを行っていきます。
官公庁などが行う調査では、質問用紙を郵送する形の調査が今でも行われていますが、インターネットが普及したことで、調査対象者とのやり取りをメールやSNS、Webサイトなどの仕組みを使って行う調査が多くの割合を占めるようになりました。
調査にかかる工数という点では大幅に削減されましたが、ネット調査には簡易であるがゆえのデメリットも存在します。
サンプルサイズや有効回答が得られているかなど、計画段階で設定した調査設計や仕様に沿っているかどうかを管理することもリサーチ担当者の役割となります。
結果を分析し、打ち手につなげる
市場調査は調査の実施完了がゴールではありません。調査から得られた結果を分析し、確実に打ち手につなげていくことが目的です。
定量調査の場合は調査結果の集計、定性調査では発言や記述などの解釈にもとづき調査結果を分析します。定量調査の集計分析はネット調査の場合、自動的に集計結果が出力されるシステムが多く使われています。
アンケート処理に特化したソフトウェアを利用すれば、検定や多変量解析といった専門的な統計処理を行うことができます。ただ、高度な統計処理を行ったからといって、マーケティング課題の解決に結びつくケースはそれほど多くはありません。
一般的には中央値や最頻値、平均、構成比、クロス集計、相関分析、度数分布といった指標をもとに、分析結果としてレポーティングを行います。
市場調査やマーケティングリサーチを成功させるために最も重要なこと
実際に市場調査やマーケティングリサーチの実施を検討されている場合に、重要なポイントをお伝えします。
調査の目的を明確にする
繰り返しになりますが、調査を実施する際、なぜ調査を実施するのか、何を知りたいか、という目的を明確にすることが、最も重要になります。
調査を実施するときに、つい「これも聞きたい」「この項目も盛り込もう」と欲張ってしまいがちです。
しかし、色々なデータが集まったものの、次に何をしたらよいかわからないということが起こりえます。マーケティングリサーチはあくまで、マーケティング上の様々な課題を解決するために実施するものです。
解決したい課題を明らかにすることで、最も知るべきことを調査で把握することができます。
専門家の知識やノウハウを活用する
デスクリサーチやインターネットリサーチ、グループインタビューなどは、自前で行うことも可能です。
しかし、マーケティングリサーチや市場調査でより望ましい結果を得るには、アンケート調査の設計やグループインタビューのファシリテーションなど専門的な知識が求められます。
また、デジタルマーケティングリサーチの実施や購買データなど自社で保有していないデータの取得も調査会社に依頼する必要があります。
さらにマーケティングプロセスに沿った有効なマーケティングリサーチが実施できる点でも専門の調査会社に依頼するほうが、効果的かつ効率的です。
電通マクロミルインサイトは、課題や調査目的の整理からお手伝い致します
電通マクロミルインサイトは、電通のマーケティングノウハウに加えて、マクロミルのデータ資産とデジタルテクノロジーを取り込んだ、専門性の高いマーケティングリサーチを提供しています。
豊富な知識と経験を持つリサーチャーが100名以上在籍し、クライアント様にとっての課題の本質を見抜き、リサーチを通じてマーケティング課題の解決のお手伝いをいたします。
特に、消費行動にデジタル分野が大きく関わる現代のマーケティングは、新しい手法が次々と開発され、マーケティングリサーチもその進化に対応しながらアップデートし続けています。
市場調査を含む、マーケティングリサーチをご検討の際は、是非一度ご相談下さい。
マーケティングリサーチのセミナーや自主調査企画も実施。